遺言書を作成する時に債務や借入金の記載は必要か?司法書士が解説!

司法書士法人ホワイトリーガル

こんにちは、「相続手続きガイド」のブログを執筆している司法書士の久我山左近です。

借金などの債務については、債権者である金融機関などの合意がなければ基本的に相続人全員が負担することになります。
また、以前は相続人の誰かに債務(借金)を引き継ぎたい場合には債権者との合意の上にさらに相続人全員の承諾が必要でした。
しかし、令和2年4月の民法改正で、相続人全員の合意がなくても遺言書に相続人の一人が債務を引き受けるという記載があれば、後は債権者との合意だけで債務を引き受けることが可能になりました。

今回のブログでは、遺言書に借金などの債務を記載する必要がある理由やそのメリットについて、司法書士の久我山左近がわかりやすく解説いたします。
これから遺言書の作成を検討している読者の方にとっては必見の内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。

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目次

遺言の中で債務(借金)の負担を特定の者に指定することは可能なのか?

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遺言書作成ご相談のページを少し見てみる!
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被相続人の方が借金などの債務を残して死亡した場合には、その債務はどのように相続されるのでしょうか?
まず前提として、被相続人の借金(債務)は、それぞれの相続人に対して相続されますので、被相続人が死亡したからといって借金(債務)の支払い義務がなくなるわけではありません。

借金などの債務は、債権者である金融機関の同意がなければ、遺言だけでは特定の相続人だけの債務にはならずに法定相続人全員の債務になります。
もちろん、借金などの債務が欲しい相続人はいませんので、遺言書の中に債務者を誰にするかは明示されていないことが多くあります。
また、遺言書に債務者が明示されていないと、金融機関の同意を得るのに相続人全員の実印と印鑑証明書を取得するといった余計な作業が必要になります。

そこで、令和2年4月の民法改正では、遺言で長男が事業承継をすると共に借入金は長男が負担すると記載してあれば、相続人の中に反対する者がいても、金融機関と債務を引受ける長男との間の合意だけで債務引受を行うことができるように改正されました。
他にも例を挙げれば、アパートやマンションの建築資金を借入金で行う目的の一つは相続税の節税対策になりますが、この借入債務の負担者を遺言書の中で長男と記載すれば、他の法定相続人の同意は不要になり金融機関との合意だけで相続税の債務控除が可能になります。

民法改正以前は三者間の合意が必要でした。

法定相続人が長男と次男の2人の場合に改正前の民法では、金融機関などの債権者と借金などの債務を引受ける長男のだけの合意では、免責的債務引受は認められませんでした。
要するに、三者間の合意が必要で、次男が債務を負わないとする契約に同意しなければ、免責的債務引受は出来ないとされていました。

債権者と引受人との契約、債権者から債務者への通知

改正民法での免責的債務引受は、債権者と引受人となる相続人が契約して債権者が他の相続人に通知することによって成立する旨を規定しました。 したがって、改正民法以後は、遺言があって長男に金融機関からの借入金を返済可能な資力があると金融機関が認めれば、次男に債務を免除する通知をするだけでよく、債務を長男が負担することに対して次男の同意は不要になります。

遺言書の中に債務を記載する理由とメリットについて

例えば、ご自身で事業をされている経営者の方は事業のための不動産などの資産もすべて長男に継がせる代わりに、借金などの負債もすべて引き継がせたいと考えている方もいらっしゃると思います。
何もしなければ、債務は法定相続分に従って当然に分割されるとしても、遺言書を書けばその割合を変えることができるのでしょうか?

これについては、「債権者との関係」と「相続人同士での関係」で分けて考える必要があります。

遺言書で債権者に対しては債務の負担指定は無効

借金(債務)である以上は必ず債権者がいますが、遺言書で借金(債務)を負担すべき相続人を指定しても、債権者に対してはこれを主張することはできません。
したがって、債権者は遺言の内容にかかわらず法定相続分どおりに相続人対して請求することができますし、それぞれの相続人は借金を弁済する義務があります。

仮に相続人が長男と次男の2人だった場合に遺言書の内容で、長男に借金(債務)を全て相続させて次男には相続させないという趣旨の遺言を書いたとしても、債権者は法定相続分に従い長男と次男に半分ずつ請求することができます。

相続人間では遺言書で負担割合の指定も有効

相続人間においては、遺言書による借金(債務)の相続方法の指定が有効です。
先ほどの例で考えてみると、債権者は長男と次男のどちらにも法定相続分に応じて請求が可能です。遺言書でどのような記載があっても、長男と次男は債権者からの請求を拒むことはできず、いったんは債権者に弁済する必要があります。

しかし、仮に遺言書の中で「債務はすべて長男に相続させる」と指定されていた場合には、次男は負担しなくてよい長男の債務を弁済したことになります。
したがって、次男としては遺言書で指定されている長男に対して支払った弁済額を請求することができます。

遺言書に債務を記載するメリットを解説します。

被相続人が事業をしているケースでは、長男といった特定の誰かに事業に継承するという理由から、事業に関係する資産と事業に関係する債務についてトータルで引き継がせたいと考えている場合が多くあると思います。

令和2年4月の民法改正では、遺言で長男が事業承継をすると共に借入金は長男が負担すると記載してあれば、相続人の中に反対者がいても、金融機関と債務を引受ける長男との間の合意だけで債務引受を行うことができるように改正されました。
逆に言えば、事業承継が絡む相続では債務も長男に引き継ぐという記載が遺言書にないと、他の相続人の反対があると長男への事業の引き継ぎがスムーズに行われないということも考えられますので、遺言書へはプラスの財産についてだけでなく債務についての記載もとても重要になります。

また事業承継以外にも、アパートやマンションの建築資金を借入金で行う目的の一つは相続税の節税対策ですが、この借入債務の負担者を遺言書の中で長男と記載すれば、他の法定相続人の同意は不要になり金融機関との合意だけで相続税の債務控除もスムーズにおこなうことが可能になります。

ここまでで、今回のブログ「遺言書を作成する時に債務や借入金の記載は必要か?司法書士が解説!」のテーマの解説は以上になります。

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カワウソ竹千代

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久我山左近

それでは、司法書士の久我山左近でした。

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