こんにちは、「相続手続きガイド」のブログを執筆している司法書士の久我山左近です。
「亡くなった父親に多額の借金があったので相続放棄をしたいけれど、未支給年金は受け取れるの?」
「夫が亡くなったので相続放棄を考えているけれど、遺族年金まで受け取れなくなるの?」
相続放棄を検討している方の中には、このような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
相続放棄をすると、亡くなった方の預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も原則として引き継がなくなります。
しかし、相続放棄をしたからといって、遺族年金や未支給年金まで受け取れなくなるわけではありません。
遺族年金や未支給年金は、法律で定められた要件を満たす遺族自身に認められる権利であり、原則として相続財産には該当しないためです。
この記事では、相続放棄と遺族年金・未支給年金の関係について、受給条件や注意点、単純承認との関係などを司法書士の久我山左近が詳しく解説いたします。
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相続放棄をしても遺族年金や未支給年金は受け取れる!
結論から申し上げると、相続放棄をしても、受給要件を満たしていれば遺族年金や未支給年金を受け取ることができます。
相続放棄とは、亡くなった方の財産や借金などについて、相続人としての権利義務を原則として引き継がないための手続きです。
一方、遺族年金や未支給年金は、一定の要件を満たす遺族に対して法律上認められる権利です。
そのため、相続放棄をした場合でも、これらの年金を請求することができます。
相続放棄と年金の関係
| 年金・財産の種類 | 相続放棄後の受け取り |
|---|---|
| 遺族基礎年金 | 受給要件を満たせば可能 |
| 遺族厚生年金 | 受給要件を満たせば可能 |
| 未支給年金 | 請求要件を満たせば可能 |
| 亡くなった方の預貯金 | 原則として相続できない |
| 亡くなった方の不動産 | 原則として相続できない |
| 亡くなった方の借金 | 原則として引き継がない |
ただし、遺族年金と未支給年金では、受け取れる人や請求条件が異なります。
それぞれの仕組みを確認していきましょう。
遺族年金とは?相続放棄をしても受け取れる理由
遺族年金とは、国民年金や厚生年金の加入者などが亡くなった場合に、一定の要件を満たす遺族に支給される年金です。
遺族年金には、主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
遺族基礎年金とは?
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者などが亡くなった場合に、所定の要件を満たす遺族に支給される年金です。
受給対象となるのは、原則として次の遺族です。
- 子のある配偶者
- 子
ここでいう「子」は、原則として18歳になった年度の3月31日までの子、または一定の障害状態にある20歳未満の子をいいます。なお、保険料納付要件なども満たす必要があります。
遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者などが亡くなった場合に、一定の要件を満たす遺族に支給される年金です。
受給対象となる遺族には、配偶者、子、父母、孫、祖父母などが含まれますが、それぞれ年齢や生計維持などの条件が設けられています。また、受給には法律で定められた優先順位があります。
なぜ相続放棄をしても遺族年金を受け取れるの?
遺族年金は、亡くなった方が所有していた財産を相続するものではありません。
遺族年金は、法律で定められた遺族自身の受給権に基づいて支給されるものです。
そのため、亡くなった方に多額の借金があり、配偶者や子供が相続放棄をしたとしても、遺族年金の受給資格まで失うことにはなりません。
例えば、夫が500万円の借金を残して亡くなった場合でも、妻は相続放棄によって借金の相続を回避しながら、要件を満たせば遺族年金を受給することができます。
未支給年金とは?相続放棄をしても受け取れる?
未支給年金とは、年金を受給していた方が亡くなった際に、まだ支払われていない年金のことです。
公的年金は原則として偶数月に前月までの2か月分が支払われる仕組みになっています。また、年金は亡くなった月の分まで支給されます。
例えば、10月に年金受給者が亡くなった場合、10月分までの年金について、まだ支払われていない金額があれば未支給年金として請求できる場合があります。
未支給年金を受け取れる人は?
未支給年金を請求できるのは、亡くなった方と死亡当時に生計を同じくしていた、次の遺族です。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他の3親等内の親族
上記の順番で請求権者が決まります。
重要なのは、相続人であることではなく、法律で定められた親族関係と生計同一の要件を満たしていることです。
なお、別居していても、生活費の援助などの事情によって生計同一と認められる場合があります。
未支給年金も相続財産には該当しない
未支給年金については、最高裁判所平成7年11月7日判決において、国民年金法に基づく未支給年金の請求権は、一定の遺族に固有の権利として認められることが示されています。
つまり、未支給年金は亡くなった方の相続財産として取得するものではありません。
そのため、相続放棄をした方であっても、請求要件を満たしていれば未支給年金を受け取ることができます。
未支給年金を受け取ると単純承認になる?
相続放棄を検討している方が特に注意したいのが「単純承認」です。
単純承認とは、亡くなった方の権利義務を原則としてすべて引き継ぐことをいいます。民法第921条では、相続人が相続財産を処分した場合などに、単純承認したものとみなされることが定められています。
例えば、相続放棄をする前に亡くなった方の預貯金を引き出して自分の生活費に使った場合には、単純承認に該当するおそれがあります。
未支給年金の受給は原則として単純承認にならない
未支給年金は、請求権者自身に認められた権利です。
したがって、未支給年金を適法に請求して受け取ること自体は、原則として相続財産の処分に該当せず、単純承認にはなりません。遺族年金についても同様です。
ただし、亡くなった方の銀行口座に振り込まれた年金を引き出す場合には、注意が必要です。
相続放棄と年金に関する5つの注意点
① 亡くなった方の銀行口座から勝手に引き出さない
亡くなった方の銀行口座に年金が振り込まれている場合、その預金を自由に引き出してよいわけではありません。
特に、死亡前から口座に残っていた預金や、死亡後に振り込まれた年金には、法律上の取扱いを確認する必要があります。
未支給年金として請求できる金額と、亡くなった方の預金は区別して考えることが大切です。
相続放棄を予定している場合は、安易に預金を引き出さず、年金事務所や専門家に確認しましょう。
② 死亡後の過払い年金は返還が必要になる
年金は、受給者が亡くなった月の分まで支給されます。
そのため、死亡した月の翌月以降の年金が支払われてしまった場合には、過払いとなることがあります。
過払い年金については、返還を求められる場合があります。
未支給年金として受け取れる金額と、返還が必要な過払い年金を混同しないようにしましょう。
③ 未支給年金には生計同一の要件がある
未支給年金は、相続人であれば誰でも受け取れるわけではありません。亡くなった方と死亡当時に生計を同じくしていたことが必要です。
例えば、長年別居していて経済的な交流もなかった子供については、生計同一の要件を満たさず、未支給年金を受け取れない場合があります。
④ 相続放棄には原則3か月の期限がある
相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。
遺族年金や未支給年金の請求手続きを進めていても、この3か月の期限が自動的に延長されるわけではありません。
相続財産の調査が間に合わない場合などには、期限内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法もあります。
年金の請求と相続放棄の手続きは、別々に期限を管理することが重要です。
⑤ 死亡保険金や死亡退職金は個別の確認が必要
相続放棄をしても受け取れる可能性があるものには、遺族年金や未支給年金のほかに、死亡保険金や死亡退職金などもあります。
ただし、これらについては、受取人の指定や勤務先の退職金規程などによって法律上の取扱いが異なります。
相続財産に該当するかどうかを確認せずに受け取ったり処分したりすることは避けましょう。
相続放棄した場合の遺族年金・未支給年金の税金は?
遺族年金と未支給年金では、税金の取扱いも異なります。
遺族年金は原則として非課税
公的年金制度に基づく遺族基礎年金や遺族厚生年金は、原則として所得税や相続税の課税対象にはなりません。
そのため、遺族年金を受け取ったことを理由に、通常は所得税の確定申告をする必要はありません。
未支給年金は一時所得になる場合がある
未支給年金は相続財産ではないため、原則として相続税の課税対象にはなりません。
一方、未支給年金を受け取った遺族の一時所得として、所得税の課税対象になる場合があります。
一時所得には年間50万円の特別控除があるため、ほかの一時所得の有無などによって実際の税負担は異なります。
税金について不明な点がある場合は、税務署や税理士に確認しましょう。
相続放棄と年金に関するよくある質問
Q. 父親の借金を相続放棄しても未支給年金を受け取れますか?
A. はい。受給要件を満たしていれば受け取れます。
父親と生計を同じくしていた子供で、法律上の請求順位に該当する場合には、相続放棄をしていても未支給年金を請求できます。
Q. 夫の相続放棄をした妻は遺族年金を受け取れますか?
A. はい。遺族年金の受給要件を満たしていれば受け取れます。
遺族年金は妻自身の受給権に基づくものなので、夫の相続を放棄しても、そのことだけで受給資格を失うことはありません。
Q. 相続放棄が完了する前でも未支給年金を請求できますか?
A. はい。原則として請求できます。
未支給年金の請求は相続財産の処分とは異なるため、相続放棄の手続きが完了していなくても、要件を満たしていれば請求することができます。
Q. 相続放棄をしたことを年金事務所に伝える必要はありますか?
A. 相続放棄の有無よりも、年金の請求要件を満たしているかが重要です。
通常、相続放棄をしたことだけを理由に遺族年金や未支給年金が支給されなくなることはありません。
ただし、年金事務所から相続放棄の状況などについて確認された場合には、正確に説明しましょう。
Q. 未支給年金の請求期限はいつまでですか?
A. 原則として、年金の支払日の翌月の初日から5年で時効となります。
ただし、年金の種類や具体的な請求内容によって取扱いを確認する必要があります。
請求できる可能性がある場合には、早めに年金事務所へ相談しましょう。
まとめ|相続放棄をしても遺族年金や未支給年金は受け取れる!
今回は、相続放棄と遺族年金・未支給年金の関係について解説しました。
重要なポイントを整理すると、次のとおりです。
- 相続放棄をしても、遺族年金は受給要件を満たせば受け取れる
- 未支給年金も、法律で定められた請求要件を満たせば受け取れる
- 遺族年金や未支給年金は、原則として相続財産には該当しない
- これらの年金を適法に受給すること自体は、原則として単純承認にはならない
- 亡くなった方の預貯金を引き出す場合には注意が必要
- 相続放棄は原則3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要がある
相続放棄をしたからといって、遺族が受け取れる年金まで諦める必要はありません。
ただし、相続放棄を予定している場合には、亡くなった方の預貯金や年金の取扱いについて慎重に判断する必要があります。特に、亡くなった方の銀行口座から預金を引き出して使用してしまうと、その行為が単純承認に該当し、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
また、相続放棄には原則として3か月という期限があるため、年金の手続きとは別に、早めに対応することが大切です。
「亡くなった親に借金があるけれど、相続放棄をした方がよいのかわからない」「年金を受け取っても相続放棄に影響しないか心配」という方は、手続きを進める前に司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
相続放棄には期限があるため、亡くなった方の借金や財産について不安がある場合は、できるだけ早めにご相談ください。相続放棄の手続きを正しく進め、大切なご家族の生活と財産を守りましょう。
今回のブログ「相続放棄すると遺族年金や未支給年金は受け取れる?注意点を解説!」のテーマの解説は以上になります。
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それでは、司法書士の久我山左近でした!












